量産家具と職人

私が木工の職業訓練校に入った時の動機は、技を研鑽する職人という姿に憧れを抱いたことがいちばんの要因でした
一つのことを極めるということに強く惹かれていたのです
ですが今はだいぶ意見が変わってきたように感じます
今でも職人という姿に尊敬を感じますが、自分が目指す場所ではないという風に感じるようになりました

木工職人を目指して

高山での訓練校は、刃物の研ぎ方から始まり、伝統的なノミ、カンナ、ノコギリなどの手作業を基礎として、徐々に機械加工を学ぶというカリキュラムで進みました
技術それ自体の魅力やものづくりの楽しさ、その奥深さを知ることになり、朝早くに起きて刃物を何時間かけて研いてみたり、技術を磨くために色々試行錯誤してみたり、それ自体には全く苦痛を感じることもありませんでした
私には同じような作業の繰り返しもあまり苦痛にならなかったので、技を磨く職人の世界にはむいている方だったと思います

削ろう会を知る

ある日の授業で、動画をみんなで見ました
それは削ろう会というかんなでの薄削の競技会の映像で、もと大工の棟梁が削ろう会での優勝を目指す姿を追ったドキュメンタリーでした
木材が、極限まで研がれた刃物と長い年月を経て磨かれた技で透けるほどに薄く削られていきます
それを見ながら、すごいけどなにか違うなと感じてしまいました
削ろう会に参加する人のどれくらいが自分の持っている技術や知識を発揮する機会を得られているのだろうか、と
自分が憧れていた昔ながらの職人像は難しいだろうと強く感じ、思い描いた職人像と実際の家具の現場がどれくらい離れているのか、現実を知っておく必要があると感じました

職人と単価

就職先は、完全OEMの家具製作会社でした
高級家具を中心に、劇場からホームユースまで幅広く、取り扱いの家具の種類は日本でもトップクラスだと思います
ここで、大型の5軸で可動する刃物が家具のパーツを削り出すCNCという木工機械に出会いました
以前から存在は知っていましたが、ここでとても複雑な動きで曲線や繊細な加工を施しているのを目の当たりにします
いままで、手作業を重んじる学校にいたので、その衝撃は大きかったです
一脚で数十万するような家具が、機械によってどんどん形になっていく様は圧巻です
機械の正確さ、スピードにとても可能性を感じると同時に、昔ながらの職人像への憧れはここで完全に諦めがつきました
手仕事につよいこだわりを持った小さな会社や工房に行けば、まだその道に行く選択肢もできましたが、そうすることはできませんでした

自分が手を動かす職人では自分の技術と単価に強い相関関係ができてしまいます
つまり技を磨き、知識が増え、仕事を早くできるようになったり、困難な仕事をすることで、時間当たりの仕事用が増え、時間当たりの収入は上昇します
しかし自分の手を動かす職人である限り、その上限は知れていますし、もし仮に単価が上がり続けても、作り出すものが工芸品や美術品のような生活から離れた存在になってしまうように感じました
それでは自分が作りたいと思っている家具の理想とは離れてしまいます
CNC、大型の工場の圧倒的な物量と高レベルの品質管理能力を目の当たりにした後では、個人の技術では出来る範囲があまりにも小さく見えてしまいました

MAKERS / メイカーズを読んで

そう考えてみたときに、自分はどこにいるべきなのかという大きな問題を改めて抱え込むことになりました
そんな時に読んだのがメイカーズという本でした

MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

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この本の詳しい内容はいつかに回すとして、この本で書かれている通り、3Dプリンターやレーザー加工機などの技術、アウトソーシングなどのサービスの発展によって、少量での生産が今までと比べ物にならないくらいに価格が下がっていくことになれば、小規模でも自分で手を動かす部分を自分でコントロールし、必要な部分は技術やサービスをすでに有している会社や個人にお願いすることが可能になるかもしれません

工場で職人として勤めれば、家具という製品ではライン工に近い仕事になることは明白で、エンドユーザーとの距離も遠く、なかなか職人としての自尊心を保つことは難しいのが現状です
しかし小規模では、前述の理由で引っかかりがありました

自分が納得できる形で、誰かに満足してもらえる製品を作り上げることができる時代が本当に来ているのか、まだ実際にサービスを開始しているわけではないので、それを実感できていませんが、今後徐々にサービスを形にしていき、自分で検証してみたいと思います

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